記憶のスイッチが入ったとき

この時間はたしか『新日曜美術館』と、
スイッチをつけて映し出されたのはどこかの教会で、
アットホームなデザインで優しい感じのする建物だと思うや否や、
反射的に語尾の上がる口調で、ごく自然にその教会の名前をつぶやいていた。
超ウルトラスーパーイントロヒント級の反応だろう。
そこは旅行で『最後の晩餐』を見学に行ったミラノにある教会だった。
時間が過ぎても、心がときめいた記憶は失われていないことに驚き、
当時の興奮が湧き返り、ピリッとしたうれしさがこみ上げた。
それにしても思い出すという行為が良い方向に働いた。
その後しばらく映像を眺めながら、
「そうそう、こんな感じだった」などと振り返り、
ますます気を良くしていたように思う。