2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧
処置の甲斐もなく、 血は止まってはくれなかったが、 だからと言って、不安があるわけでもなかった。 というのも、いま自分は独りではなく、 病院にいて医者に診てもらっていることが、 説明不要の安心感を与えていた。 こういう状況下では、誰だって似たよ…
いつも通りレントゲン。 撮影室に入る手前で、 視線を感じて横を向くと、すぐ横にいた 車いすに乗ってスウェットを着た女の子と眼が合って、 こちらは見下ろす感じ、向こうは上目遣いで、 少しの間お互い見合ったまま。 人は誰しも上目遣いに弱いものです。 …
一通り洗浄が終わり、止血を施された私は、 家族への連絡を提案され電話をかけた。 事後報告と、シャツが破れているので、 着替えを持って来てほしい意味もあった。 自転車から落ちて骨が折れたという話は、 家族をひどく動揺させ、落胆させた。 すぐこちら…
現れたのは同じ年くらいの痩せた色黒の医師と、 ベテランそうな黒縁メガネの看護師だった。 早速傷口を見せると、ケガの経緯の問答の後、 医師は「ほう…これは…」とつぶやき、 まずは患部の洗浄に取り掛かることとなった。 理髪店で髪を洗うシンクみたいな所…
水で道路の血だまりを洗い流す間も、 曲がりくねった狭路を走り下りる間も、 揺れる車内で、 左腕で手すりを握って体を安定させ、 相変わらず若手の隊員に 右腕を持ち上げられたまま座り続けた。 痛みはあまり感じなくなっていたが、 体のだるさや疲れを感じ…
ヘルメットのヒビの一部。 右の内側と側頭部にもある。 ちなみに自転車のヘルメットは、 衝撃吸収時にヒビが入るような設計になっており、 一度役割を果たすと使えなくなる。 到着した救急隊員がケガの程度を確かめたり、 私に気分や痛みを尋ねたりしていた…
右腕を発見者の奥さんに支えてもらい、 空に向かって上げ続けていた。 この体勢が楽だからだ。 それにしても、介助してくださるこのご夫婦に、 ありがたい気持ちでいっぱいだった。 ふもとからサイレンがかすかに聞こえてきた。 そのとき突然頭上から、 「結…