朝〜事故後2日目

眠った覚えがないまま、
気がつけば朝が来ていた。
右腕が痛む。体もかなりだるい。
血液のシミが広がる包帯の内側では、
ねちゃねちゃした感触がある。
それでも、待ちに待った朝だ。快晴だった。


片腕で顔を洗うというか濡らし、
卵とハムを焼き、
白ご飯とさんまの塩焼きとサラダを、
左手で時間をかけて平らげた。
よく食べた。そして元気が出てきたふうに感じた。
お茶で一服しつつ、
ちょっと縫ってギプスをしてもらい、
早く家に帰ってこようと、
食卓で今日一日の流れも思い描いていた。


部屋のあちこちで猫たちも食事をしている。
念のためフード買ったけどすぐ帰ってくるからな!と、
手当たり次第やさしく撫で、あいさつした。
ひとりで出発しようとすると母も来た。
来なくていいといったけれども、
強引に、ついていくと言ってきかなかった。


血の付いたポロシャツを着替えることも忘れ、
外に出た私と母はタクシーを呼び止め、
「良いらしい」病院へと向かった。


10分ほどで着いた病院は、
ちょうど通勤時間帯らしく、
いそいそと多くの職員が正面玄関に入っていくのが見えた。
出勤風景に映る顔はどこもみな同じで険しい。
月曜日だからなおさらだ。
そしてこのオレも、今はその一人なんだと、
彼らと一緒に玄関に入っていった。