auspico

出たがしかし

 無人の境内で一休みしていた男は、
なぜかおみくじを引きたくなった。お参りもすませ、
ガラガラと何も考えずに振って出たのは第十一番。
大吉を当てた。たかがおみくじとはいいながら、
まんざらわるい気はしない。
 ところが中身を読んでみるとどうだ。
冗談のような明るいご利益を期待していたところ、
七転八倒の末に願いが叶うとか、苦しいことがたくさんあるとか、
大吉のわりに現実的で厳しい内容が記されており、
男の眉間にしわが寄るのも仕方がない。
 軽く気を取り直し家路を急いでいると、突然雲行きが怪しくなり、
にわかに雨が降ってきた。
この雨は大吉の始まる合図なのかもしれないと、
そんな都合のいい考えは毛頭なく、
雨具のない男はびしょぬれでペダルを踏み続けた。