meglio pace

 試着室でレイヤーを何着かトライしていた。
カーテンの裾のすきまには、
無造作に脱ぎ捨てられた白いスニーカーを揃えようとする手があった。
こういう日に限って、
ジョギング用の履き古し汚れの目立つシューズで出かけるものだ。
ネイルがよく手入れされたその手に、一瞬の躊躇を見た気がした。
無理もない。
 お疲れ様でした、と裏のない笑みを浮かべたスタッフの平凡な言葉は、
そのとき勲章の一つに値した。


 身だしなみは大切ですよ、気が抜けない。