不思議なものをみた

夕暮れ時に、チャリでよく行くルートをポタリング中、
腹の足しにクッキーを口にしながら山の寺の脇道で休憩していると、
ふと西の方角に目が向いた。
そこでみたものはいわゆる東屋の下、
明るい青やピンクの形容しがたい衣装を着た女性が数人、
何のセリフか聞き取れないが声を出しながらゆったりと、
あたかもモスラを呼びそうな踊りをしていた。
雰囲気からするとどうやら稽古をしている印象だ。
その舞いを監修するかのごとく、
白いひげの、サドゥーのような爺やが傍に座していた。
おれは一瞬、ここはどこなんだ、インドを旅行しているのか?
幻覚をみるほど走ってないぞ、病んでるのか?
などと最初我が目を疑ったがやっぱり真実で、
本当にモスラを呼ぶ練習なんじゃないかと、
自分の判断に自信がもてなかった。
また、日舞や能など伝統文化に無学なので、
ひょっとするとこれに該当するのかもしれないが、
あの爺やは何かの教祖かもしれないと、
考えがまとまらずに呆然と時間だけが過ぎていった。
とにかく踊り手の一人がかわいいことは見て取れたので、
どうにかしてもっとよくみたいのだが、
いかんせん夕日で逆光となり確認し難く、
直接彼らに何をやっているのかと、
神聖で静寂した空気をぶち破って尋ねる度胸もなく、
雨月物語』みないな罠にはまる危険もないことはないので、
チキンなおれは見てはいけないものを見た心地で家路を急いだ。
それにしても不思議だった、
昔なら当たり前な光景だったのかもしれないけれども。