『スローカーブを、もう一球』

山際淳司さんの書くものは静かに熱く、
ぐいぐい読ませられる。淡白な語り口が返って真に迫っている気がする。


年齢やアマプロ関係なく、剛速球を放る、
いわゆる本格派と呼ばれるピッチャーよりも、
軟投派のほうに魅力を感じている。
飛躍するが、だから野球が面白いと言ってもいいと思う。
ただしナックルボーラーはまた別。
どのタイミングで星野(伸)がスローカーブを放るのか、
ゴジラに対して次こそ投げるんじゃないか今中は、
そう自由に推理するのが面白かった、何を放るかという単純なことを。
その投球を読むのと同じ感覚がこの小説は持っている。


無性にキャッチボールでスローカーブを投げたくなってしょうがない。
それを素手で捕球してくれる人は、素晴らしく話の分かる奴だと思う。