No soldi

一番左デルス右カピタン

 カレーを注文してカウンターで時間を潰していた。
何気なくポケットに手をやると感触がない。財布がなかった。
 お店の方に慌てて事情を言うと、
いつでもいいですよと笑顔で応じてくれた。
最近通い始めて顔が知られているのが幸いした。
家に連絡すると、テーブルの上に財布があるらしい。
ほっとすると同時に情けなさがじゅわっと湧いた。
 そこへあつあつのカレーとナンが目の前に運ばれてきた。
恥ずかしいやら後ろめたいやらで穴があったら入りたい状況で、
のどを通るのかと疑問に思ったのもどこへやら、
汗かきガツガツ堪能している現金な自分がいた。
 開き直りは食べ物の力か己の図太さか、
こういう人間は小部屋で神父様に告解する必要があるんじゃないだろうか。
とにかくうっかり癖発動の午後だった。