アルセーニエフ「シベリアの密林を行く」

 第1回目・2回目ウスリー地方探検の記録。
著者が観測隊の単なる指揮官だったのではなく、
温かさを持った鋭い観察眼と筆力が備わっていたことにより、
じっくり語り聞かせてくれたような気持ちだった。
 この作品に接したことのある人には
いま自分が自然とかけ離れた生活を営んでいるかが身にしみ、
必ずやゴリド人デルスに憧れを抱くと思う。
 これを筑摩書房の世界ノンフィクション・ヴェリタ第1巻で読んだ。
この巻には他にヘディン「中央アジア探検紀」と、
ムアーヘッド「白ナイル」が含まれていて、これまた大変面白かった。
しかしこの2作は、探検のリーダーたちが一方的で、
また物量作戦とも言える西洋の開拓精神が強すぎ、
記録の域でとまっている。
その点、決して自然に逆らわないデルスとそれに異を唱えない隊長のタッグは強力無比で、
探検の記録よりもデルスの人となりに重点がおかれ、
行軍するにつれ二人の関係が友情へ、
さらに強い絆へと発展していくところにぐっと引き付けられたと思う。
 きっとまた読む日が来るだろう。
映画は『デルス・ウザーラ』(ソ連、1975)。3回目の探検も含まれる。
一見してものすごいロケだったと思う。たまらない作品だった。
「カピタン」とか「アンバ」とか言いたくなってしょうがない。