落車

 それは9月8日曇り、夕方4:30頃のことだった。


 隣町にあるお気に入りのパン屋を出て、
まっすぐ帰宅するつもりが、
近くの坂道をもうひと漕ぎしてから帰ろうと、
時々走る道へ向かうことにした。
ちょっと遠回りをしてしまう気持ちは、
自転車好きの方なら理解してもらえると思う。


 マイペースで登板し、
目的地である登山道の入口に着いてしばらく休憩した後、
今度こそ家路につき坂を下っていた。
何度も通った見慣れた景色だ。
気分よく、
乗り慣れたマウンテンバイクのブレーキをかけながら、
とろとろと降りていたのだが・・・
その時ジュワッと、
額の汗が両目に入り染みて前がよく見えなくなった。


 左手であわてて目をこするや否や、
突如スピードが上がり、
ギュッと両手でブレーキをかけてもなぜか速度が落ちない。
自転車がガタガタ震えだした。
なぜだ!「ロック」したか!?


 何とか懸命に制御しようとがんばったけれど、
朝まで降った雨で湿った路面は容赦せず、
減速する気配が全くない。
また運悪く、地面の起伏のためか、
あるいは石が落ちていたのだろう、
気が付くと、そこに乗り上げた私と愛車はジャンプして宙に浮き、
濡れた鉄板の上に着地し、タイヤが左方向に滑るのを認めた。
そしてそのまま、アスファルトに右半身から叩きつけられた。
 ほんの一瞬の出来事だった。