「これでよろしゅうございます」
その人のよく言われるセリフのひとつだ。
こんなに心を鷲掴みにされる『きょうの料理』は初めてだ。
先週末の深夜に、NHK教育でのミッドナイトチャンネルにて
昔のを再放送していて、録画しておいたのを見た。
言うまでもないが、村上信夫シェフはすごい。
私があれこれ詳しく語らなくても
氏について興味のある方は調べていただいて、
過去の放送も何としてでもご覧になってほしい。
料理への滲み出る愛、歯切れ良く愛嬌ある語り、
苦労を乗り越えてきたからこそ発せられる陽気さと眼差しの真剣さ、
そしてその圧倒的な存在感、どれを取っても本当に凄い。
料理番組を見ながら涙したのもこれが初めてである。
当時はアシスタントのアナウンサーがいない形式なのか、
大柄でふくよかなシェフが進行もかねて一人でどんどん進めていく。
材料の各分量が手書きのようなテロップで示され、
古い型の冷蔵庫からシェフ自ら食材を
取り出してのしのしとこちらに戻ってくる。
何だか一挙手一投足に温かみを実感できる番組に仕上がっている。
昔のテレビには温もりがあったような気がした。
ただ今はそんなこと置いておいて、
画面の向こうで、心を込めて料理の素晴らしさを
伝えようとしているシェフが調理されているのを見ていると、
勢いこちらも無性に同じことをやりたくなった。
だから作りました、ミートパイを。
おっしゃるとおり簡単に、とても美味しく出来上がりました。
ありがとう。
願わくば、こういう人のもとで働いてみたかった。
シェフの料理を実際に食べてみたかった。
しかし、こんな人が生きていたということそのものが
少なからず励みになるように思う。