『未来世紀ブラジル』(アメリカ・イギリス、1985)

細部まで行き届いたクオリティの高い美術、
鎧武者やビルが噴出する破天荒な夢と
独特でありながら近未来を予感させる現実世界の対比と融合、
鋭利で強烈な文明批判、どれからも巨大な力がこもっていて、
途中疲労を覚えるけれども、見終えたあとの心の中の静寂に驚いてしまう。
どのシーンにも、自然とうなずいてしまうような皮肉が連続していて、
それが緊張感を持続させているのが疲れる理由かもしれない。
同時に、普通でないことが当然のように行われてる現代に、
のうのうと暮らしている事実を反省させられる。
そして、従来のモンティパイソンと違い、
笑いよりも風刺に重点を置いているような気がした。
デ・ニーロ扮するタトルが、高層マンションの通路から
ワイヤーで去るシーンを真似したい。
いや、どのシーンがというよりも、
濃密で記憶に残ってしまうシーンの連続にも圧倒される。
こういう作品をみるといつも、
映画でなければできないことがあると確信することになる。