救急診療終了

挨拶のあと、
まずは医師が母に説明をはじめた。
応急処置をしたので、
明日の朝一で、この病院の整形外科か
近くの整形外科へ受診するように勧めていた。
また、家に帰ってから何かあれば、
夜間もおりますので、遠慮なくこちらへ来てください、
とも我々に伝えていた。


表現はおかしいけれど、
ある程度無事なのを知ってほっとしたのと、
ケガした息子への呆れた気持ちが入り混じった顔で、
母はX線写真と私の顔を交互に眺めていた。


それから着替えの前に、
念のため破傷風の注射もしてもらった後、
看護師から診療費の支払方法を聞いた。
いま1万円を前金で払い、
病院の会計が開く明日以降に、
差額を返金するか、追加料金を支払うこととなった。


持って来てもらった着替えは、
ポロシャツ・パンツ・長ズボンだったが、
何を考えたのか、
そのパンツは紺色を基調とした背景に、
電車と線路と
意味不明のアルファベットがいくつも描かれた、
「ファンシー」すぎるパンツだった。
普段着ることはなく、
引き出しの奥にしまっていたはずなのだが、
どうしてこれを選んできたのか見当がつかない。
恥ずかしくない、もっとごく普通のパンツがあるのに…。


ぎこちない着替えをみて、
手伝いましょうかと看護師に言われたけれど、
やんわり辞退し、着替えを終えた。
腰の傷がズボンに擦れて傷む。


包帯で巻かれた右腕を三角巾でつってもらい、
お礼を述べて家路についたのは6時半を過ぎたころだった。
外は風がなく、日中の熱気がまだ残っていた。