帰宅

自分の骨折に関係なく、
町は普段通りに動いていたことに多少戸惑った。


駅を目指すと、
どうも右脚の股関節が痛くて、
足を引きずるように進んだ。
歩調を合わせずズンズンと歩く母は、
遅れてついていく私を何度も振り返りながら、
少し先を行っていた。


乗った電車は事故による遅延で、
すぐには発車しなかった。
よくあることなのに、
いつもよりも待ち時間が長いように感じる。


その間、
明日行く病院は家の近くにしようとか、
ケガをして手当を受けるまでの経緯を
ポツポツと話すぐらいで、
終始おだやかな時間だった。


帰宅するやいなや横になった。
痛みから少しは解放され、
それに耐えてきたから体がだるい。


晩ごはんは、さんまの塩焼きで、
少し美味しそうに見えた。
左で持ち上げてかぶりつき、
食後はまた横になった。
とにかくだるく、
どんよりとした疲れを感じていた。
気分はわるくないが、
何もする気が起きないし、
眠れそうなにもなかった。
今日の出来事は何も考えずに我慢して、
このままじっと右腕を胸の上に置いて、
明日の朝を待つつもりでベッドの上で過ごすつもりだった。


早く朝が来てほしい。
明日近くの病院に行けばいいだけだ。